コンテンツブロッカーが変えるwebメディアの未来
こんばんわ、ライターの米倉です。
いま、WEBメディアの未来が変わろうとしています。
先日iPhoneの新しいOSである「iOS9」がリリースされ、新たに搭載された「コンテンツブロッカー」機能が話題になりました。
有料アプリ「Crystal(120円)」を利用するとiPhoneの標準ブラウザであるSafariでWEBページ上の広告が表示されなくなるという拡張機能です。
出典:nuzzel.com
App storeの有料アプリのランキングでもリリース直後から上位につけており、レビューをみるとその反響を伺うことができます。
広告をブロックする精度に関してはまだまだ発展途上であるため、消える広告もあれば表示されてしまう広告もあります。しかし広告が消えないサイトに関してはCrystal内でブラックリストとして登録することで、一層広告ブロックの精度が増していきます。
ユーザーにとっては広告が表示されない事で記事が読みやすくなっただけでなく、WEBページを読み込む際に「バナー広告の画像データ」を受信する必要がなくなった為、WEBページの表示スピードが格段に上がるというメリットがあります。
ユーザーから見ると、まるでメリットしかないように感じられるかもしれません。
しかし私は「インターネットを通じて、無料で有益な情報を得られなくなる未来」の始まりだと思っています。
では「コンテンツブロッカー」の登場によって、どうしてそのような未来が訪れると考えられるのかを解説します。
■広告ブロックによって消える広告とは
まずは広告ブロックによって消える広告の説明をしましょう。
今回の広告ブロックでダメージを受けるのは「バナー広告」と呼ばれる広告です。PCのサイトを例にあげるとわかりやすいかと思います。
皆さんお馴染みのYAHOO!JAPANのトップページを見ると、バナー広告のイメージを掴めるのではないでしょうか。
赤い枠でククられた箇所がバナー広告です。画像やテキストを決められたサイズ内で表示させ、クリックすると広告主のサイトへ誘導されるようになっています。
では次にnanapiを例にモバイル端末のバナー広告もみてみましょう。
広告なので、比較的目立つ箇所に設置されていることが多いです。
スマホが普及したことによりユーザーのネット閲覧時間が増え、WEBリテラシーが高まってきてるでしょう。皆さんの中にも広告の見分けがつく方が多いのではないでしょうか?
見分けがつく方は、今までなんとなく広告であるからとスルーしてWEBページを閲覧してたかと思います。
「そもそもスルーされてるものなんだから、バナー広告を全てなくすことで、サイト内コンテンツだけにユーザーが集中できるようにしようよ」という目的を果たすために作られたものが広告ブロックなのです。
では、アプリ「Crystal」で広告ブロック機能をONにした場合に、先ほど取り上げたnanapiの同ページがどのように表示されるのかを見てみましょう。
先ほどまで表示されていた広告が消えているのがわかります。
WEBサイトによっては記事の途中でバナー広告が盛り込まれていたりするので、確かに広告がなくなると、視覚的にコンテンツに集中できることは納得いただけるかと思います。
またページが表示されるまでの時間を短縮できるので、ユーザーの感じるストレスも軽減されるに違いありません。
■バナー広告が消えるとどうなるのか
バナー広告とは「画像やテキストを決められたサイズ内で表示させ、クリックすると広告主のサイトへ誘導される広告」と説明しました。
バナー広告を設置する枠を広告主に売ることで、運営を成り立たせてるWEBメディアの運営者は非常に多いでしょう。
(もちろんマネタイズの手法はそれだけではありませんが)私たちに無料で情報を提供できているのは、広告収入があるからだといっても過言ではありません。
大前提として、広告は見てもらえるから価値があるものです。
すべての広告がブロックされ表示されなくなると、どうなるのか。
もはやWEBメディアでの広告スペースの価値がほとんどなくなってしまうのは明白でしょう。価値がない広告スペースにお金を払ってくれる広告主はもちろんいません。
他の収益源があるといえども、大抵のメディアはメインの収益源が広告であるはずです。無料で情報を発信しているメディアが、広告からの収益を上げられなくなるとどうなるでしょう?
今まで無料で配信していた情報を有料で配信せざるを得なくなるのです。
皆さんはそれでも広告を消しますか?
無料で情報を得られる事が当然だと思っている人には考え難い未来かもしれません。
でも、ちょっとずつそんな未来に近づいているのです。
■メディアを運営している企業の対策とは
冒頭で説明した通り、広告ブロックの機能はまだまだ発展途上であります。
そして広告の形は様々なので、もちろん全ての広告が消えるわけではありませんから、いくつかの対策は考えることができます。
例をあげると、「タイアップ広告」と呼ばれる広告はブロックの影響を受けません。
簡単にいうと記事広告です。オウンドメディア運営で成果を出し続けているLIGのページを見てみましょう。
タイアップ広告には「PR」や、「sponsored」と明示されていることが多いです。
(メディアによってはあえてわかりづらくしたり、明示されてないこともあるようですが・・・)
LIG inc:http://liginc.co.jp/
記事ページに入ってみると一見通常の記事のように見えますが、記事を読み進めていくと広告主サイトへのリンクが貼られています。
赤くククった箇所が広告主サイトへのリンクです。
普段記事を読んでいて「最後まで広告だと気づかなかった」ということが一度はありませんか?もしくは広告だと気づかずに読み進めている方もいらっしゃったと思います。
このように自然に記事に溶け込むタイアップ広告は、バナー広告の価値が低くなっていくにつれて増えています。
またもう一つの例をあげると、アプリにするという策もあるでしょう。
アプリ内のブラウザのことを「webview」と呼ぶのですが、ご紹介したコンテンツブロッカー「Crystal」はiPhoneの標準ブラウザである「safari」の拡張機能なので、アプリ内の広告に関してはブロックを避けることができます。
しかしアプリ内で広告をポップアップ表示(※1)させたり、スクリーン下部に固定された状態で広告を表示させる(※2)ことは、ユーザビリティを下げかねませんので注意が必要かもしれません。
(※1 突然画面を埋め尽くすポップアップ表示)
(※2 スクリーン下部に固定された広告)
■ダメージを受けるのは企業だけではない。
先日「Crystal」に広告のブロック対象から外すための有料オプションが追加されたとの発表がありました。
WEBメディアを運営している企業にとってはお金で解決できる問題かもしれません。
しかし誰でもHPを持てるようになった今、個人でメディアを運営している方ももちろんいらっしゃいます。
個人でメディアを運営し、情報を発信されている方が広告を表示させるタメにわざわざお金を払うのは、なんだか腑に落ちません。
例えるならば、皆さんは慈善事業としてボランティアをする為にお金を払いますか?
(大半のボランティアは「ためになるのであれば」という慈善意思の元無償で行うものであり、参加者がお金を払うケースは非常に少ないはずでしょう。)
広告ブロック機能は「メディアを運営している方・またこれから運営を考えている方」が情報を発信するモチベーションが下がるきっかけになるのです。
又、これから情報を発信する場を設けようと思っている方にとっては、大きな参入障壁にもなり得ます。
情報の発信者が苦しんでいる今だからこそ、私たちは普段得ている情報がなぜ無料なのかを理解する必要があるのです。
この記事が理解への第1歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
さようなら。
ライター米倉:@michilson0228
※個人の見解であり所属する組織の公式見解ではございません。